「労働基準法」は、雇う側の責任や最低限守られるべき労働条件の基準が記された法律です。働く側(労働者)は、この法律に守られていることを知っておきましょう。「なんか変だな」と思いながら「仕方がない」とあきらめていた会社のルールが、実は労働基準法に照らしてみると間違いだった、ということもあるかもしれません。安心して長く働き続けるために。よくありそうなケースやシーンとともに、気をつけたいポイントを紹介します。
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
「オフィスを空けておくことはできないから」という理由で、ランチタイムに順番に電話番をしたり、お弁当持参で自分の机で食事をしながら掛かってきた電話を受けるのが慣例になっていたり。そんな会社もあるようですが、これは、厳密には「労働時間」にカウントされます。労働基準法が定める「休憩時間」は、労働者が「自由に利用できる」ものでなくてはいけないからです。持ち場を離れることができず、電話がかかってきたら応対しなければいけない「ランチタイムの電話番」は休憩時間にはならないので、労働者はその後に改めて休憩時間を取る権利があります。
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
まず基本として抑えておきたいのは「残業代は1分単位で請求できる」ということです。会社によっては「15分単位」や「30分単位」といった大ざっぱな切り方をしているところもあるようです。でも、残業時間を勝手に切り捨てたり四捨五入したりすることは、法律上は認められていません。ただ、これでは1ヵ月の残業代の計算があまりにも煩雑になるので、1ヵ月単位で30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げることは認められます。
次に覚えておきたいポイントが「使用者は、労働時間によっては時給を割増にしなければならない」ということ。これはちょっとややこしいので、詳しく説明していきましょう。労働基準法32条は、使用者に対して「従業員を1週40時間以上、1日8時間以上働かせてはいけない」と定めています。でも、仕事の進み具合などで、現実には、なかなかその通りにはいきません。そのため、多くの企業は労働者と協定を結び「残業」ができるようにしています。そして労働基準法37条では、1日8時間を超えた分の労働に関しては25%以上の割増賃金を、深夜10時~翌朝5時にかかる場合は50%以上の割増賃金を払うように定めています。
では、たとえば「1日6時間」という雇用契約で働いていた場合は、どうでしょうか? そうした場合は、6時間を超えた分の時給を1分単位で請求できます。
ポイントは
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働者は、6ヵ月間継続して勤務している、全労働日の8割以上出勤しているという条件を満たせば、有給休暇を取ることができます。有給休暇は、基本的にはいつでも自由に取得することができ、取得の理由を説明する義務もありませんし、基本的には会社側はこれを拒否することができません。ただし、同じ部署の人たちが、一斉に有給を申請してきたら、すべてを認めるとその部署だけでなく会社全体のの業務に支障を来す、というようなことがある場合には、調整が必要になることもあります。
有給休暇の取得では、申請を受けた上司から、所属部署内と関連部署に連絡がいくことがあります。有給休暇の取得によって、業務に支障をきたさないために「お休み情報」を周知させるようにすることも気持ち良く休暇をとるために必要なことですね。
休憩時間が取れないといった業務上の不満や休暇や残業などの疑問がある場合は上司へ率直に相談するのがよいでしょう。その時に役立つのが、ここで紹介したような労働基準法等の基本的な法律知識です。知らないと「あれ?」と思っても、不利な条件で働き続ける、または、働くことが辛くなって辞めざるを得ないことになってしまいます。長く、快適に働き続けるためにも、自分の「労働者としての権利」を正しく理解し、主張できるようにしておくといいですね。ただし、所属部門の上司と話す場合に「自分の主張を100%認めるべき」という態度では、お互いの関係が気まずくなり、かえって働きにくい立場になってしまうこともあります。法律の知識を持って、自分自身の権利を主張はしても、会社側の話もよく聞いて、お互いが納得できるようにすること。それが快適に働く上で、基本のコミュニケーションルールです。
体調不良や交通機関の遅延などで、やむを得ず欠勤したり、遅刻したりすることがあります。そんな場合には、できるだけ早く派遣先の上司に電話で連絡しましょう。メールだけでは失礼に当たります。欠勤の場合「○○なので、休ませていただきたいのですが」といった簡単な事情説明をし、必要なら仕事の引き継ぎをしてください。遅刻の場合は「○時頃には着けそうです」という見通しも伝えるとよいでしょう。その後、派遣会社の担当にも連絡を。
終業時間を迎え、自分のノルマも終了。でも、周りは忙しそうに働き続けている。そんな時、お付き合いで残業をする必要はありませんが、あまりに平然と帰るのも考えものです。時間に多少の余裕があれば「何かお手伝いすることはありませんか?」、どうしても帰りたい時には「申し訳ありません、今日は用事があるのでお先に失礼します」と一声掛けることで、グッと印象がよくなります。「自分が逆の立場だったら・・・」と相手の気持ちを考えることが、よい人間関係を築くコツです。
急いで帰る必要がない時でも「残業すればいいか」と考え、だらだらと働くのは感心できることではありません。周囲にイヤな印象を与えてしまうだけではなく、会社としても無駄なコストになって、結果として会社の業績に影響することも。仕事は勤務時間内にテキパキ終わらせる、を基本にしましょう。また、残業をするには事前の申請が必要な職場もあります。終業時間ギリギリになって時間内に終わらないことが分かり焦っても、残業ができないことも。普段から仕事の項目を立てて計画的に進めていけるようにしましょう。
所属部署の上司に疑問点を確認したり、相談を持ちかけるのは悪いことではありません。ただ、上司も忙しいので、突然、相談を持ちかけられても、ちゃんと対応できないこともあります。仕事上のちょっとした質問程度なら立ち話でもよいのですが、少し込み入った話の場合は事前に申し入れて時間を作ってもらい、きちんと面談スタイルで相談した方がよいでしょう。
仕事をする上で大切なのは、相手の気持ちに立って考え、行動できるかどうか。「自分がこういう態度を取られたらどう感じるだろう」「こんな時、どうしたらチームの役に立てるだろう」。自分の都合だけではなく、周囲の気持ちや組織の事情を考えて動くことで、周囲もあなたの仕事ぶりを評価してくれます。他人が困った時に助け船を出せる人は、自分が困った時に助けてもらえます。オフィスで働く上で、基本的なマナーを守り、会社のルールも認識した上で、「お互い様」の気持ちで働く。当たり前のことですが、その当たり前のことを忘れずにいることが、長く快適に働くためには重要だと言えるでしょう。